引退競走馬と霊芝

馬の寿命は約20年から30年だと言われています。競走馬として活躍している馬たちは「天寿を全うする」ことができるのでしょうか?馬好きの私にとって、これはずっと心に引っかかっていることです。

文.図/許嘉玲

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先日、ニュースで偶然オーストラリアの競走馬に関する記事を読みまして、衝撃な事実を知りました。記事の内容によると、僅か22日間で約300頭もの競走馬が殺処分にされたとのことです。しかも、殺処分にされた競走馬たちは生前、馬主さんの為に500万オーストラリアドル(おおよそ3億7千万日本円)の賞金を稼いでいたことが分かりました。

競走馬産業は派手なイメージの裏に、厳しい一面もあります。馬主は自分の愛馬がレースで勝ち抜くことを期待していますが、どんな試合でも勝者がいれば敗者もいるわけです。「勝ってば官軍」や「適者生存」などはまさに競走馬界のことを表すのに適した言葉です。例として、競走馬は試合中で失敗した場合、あるいは怪我や極度のストレスなどによって優勝する可能性を失えば(体の怪我やストレスなど)、血統優秀な競走馬は再びまた乗馬クラブや牧場などの場所で第二馬生を得ることができるかもしれませんが、そうでない馬は第二馬生を迎えるのが難しくなります。

日本における競走馬の主流はサラブレッドです。サラブレッドが乗馬クラブなどで活躍している姿を見たことがある人は少なくはないだと思いますが、引退競走馬を乗用馬に調教するのは容易なことではないと、私は思います。馬の心身ともに健康な状態を維持しながら、馬一頭一頭に適切な運動方法を見出すには時間や根気が必要です。

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馬の心身ともに健康な状態を維持するのも決して簡単なことではありません。以前、とある本で競走馬についてJRAの調教師はこのように述べていました。「競走馬一頭一頭にかける人間の愛情と時間が少なすぎる」「人間と馬のコミューニケションをどう考えるか、馬が人間をどう思っているか、そういう基本的なことに思いを巡らせているホースマンはほんの一握り」。

かけられた時間も愛情も少なかった馬たちは、性格が尖っている子もいます。乗馬は特に安全を第一に考えていますので、性格が穏やかでない馬は、再調教の難易度は更に高くなります。また安全性を第一に考えている乗馬クラブにとって性格に問題のある馬は受け入れることが難しく、引き取り先のない馬は結果として殺処分されてしまうのです。

さて、性格が尖った馬ってどんな馬でしょう。想像しにくい方もいると思います。私も、ある馬と出会う前は馬の性格は教科書で書いている通り、穏やかな草食動物のイメージだと思っていました。

2017年に、乗馬クラブのインストラクターの紹介で一頭の競走馬と出会いました。この馬は優良血統もなく、競走馬時代も大した成績も残せなかったごく普通の5歳の引退競走馬で、初めて会った時は先日までレースに出ていたとは信じられないぐらい細くて弱く、毛並みも汚い馬でした。

引き取ってから最初にあたった難関は再調教が難しいことです。前述した様に、おそらくこの馬は人から多くの時間も愛情もかけられなかったために、人間に対して良い印象がないのだと感じました。例えば、ブラッシングをしようとしたら私の腕を噛み付いたり、顔やお腹を触ろうとしたら回し蹴りをしたり、人の動きに対して攻撃的な反応がみられ、どうやってこの子と接すればいいのか最初は本当に困惑しました。

人を噛むので気が強いのかと思いましたが、馬場に出すと周りの人の声や自転車のブレーキ音などに対して過敏に反応し、立ち上がったり逃げ出したりする行動もありました。大人しく騎乗させてくれることも難しく、数え切れないぐらいの落馬と怪我で苦戦しました。性格が尖った馬とはこのような感じですが、根気よく諦めずに時間と愛情をたっぷりかけ、この子と正面から向き合うことで互いの成長を感じることができ、それは言葉では伝えられない喜びと達成感です。

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再調教だけではなく、健康面にも問題がありました。出会った当時のこの馬の弱そうな姿と、5歳の若い馬にはとても見えない汚い毛並みが気になり、引き取ってから直ぐに血液検査を依頼しました。その結果、白血球の数値に異常があり、感染症や炎症反応があることが明らかとなりました。

健康を取り戻し、それをどの様に維持するのか、様々なサプリメントと食事の組み合わせを考えてみましたが、私は馬のプロではないのでどのような方法で試すべきか悩みました。最終的にやはり自分が子供の頃から飲んでいる漢方−霊芝を使ってみることにしました。

しかし、この馬にどうやって霊芝を飲ますのか。「良薬は口に苦し」霊芝は特に強い苦味がります。人間の私ですらその苦味に耐えるのがやっとなのに動物がこの苦味を受け入れてくれるのか、更に苦悩が増えました。

ある日、霊芝を飲ます方法を思いつきました。乗馬をする人には馴染みのある方法ですが、それは馬にご褒美として角砂糖などをあげることです。馬は甘いものが大好物なので霊芝を砂糖と混ぜてあげれば食べてくれるのではと考えました。

すぐに試してみましたが、砂糖を混ぜたとしても霊芝の苦味は強く、砂糖の甘みはほんの僅かしか感じません。果たして馬はこれを食べてくれるのか、一か八か試してみたところ飼葉桶に入れた苦い粉を普通に食べてくれました。不思議なことに霊芝の粉を入れている容器を欲しがる様に鳴き声を出してアピールしてきました。

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霊芝を食べさせてから5ヶ月、元々問題のあった血液検査も全項目正常値に戻り、見た目にも劇的な変化が見受けられました。下の写真は出会った当時の写真と霊芝を食べさせてから5ヶ月後の写真です。どっちがどっちか一目瞭然だと思います。

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霊芝は経口服用だけではなく、塗り薬としても効果を発揮します。馬は運動中に怪我をすることもあり、特に足は馬の第二の心臓と呼ばれるぐらい足の怪我の程度によっては馬にとって致命的なストレスになることもあります。運動の質はもちろん、酷い足の怪我は鬱や疝痛なども引き起こす可能性もあります。下の写真は運動時にできてしまった傷で、すぐに霊芝タンパクのジェルを塗布したものです。塗布後24時間以内に内出血も赤みも全てなくなり、異常反応も一切ありませんでした。

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動物は言葉を喋れないので、病気になって身体に不調があったとしても、どこがどのように痛むのか、いつから痛むのか、症状を伝えることが出来ません。その為、飼い主がいかに早く変化に気付くことができるか、観察力や洞察力が彼らの命を救うことに繋がります。

霊芝は二千年以上の食用歴史があり長期間服用しても安全かつ副作用が全くなく、研究によって更に人や動物の健康を良くする効果があることが証明されています。

この子と出会ってから3年が経ちました。これからの長い馬生で様々な困難に直面することも多いと思いますが、霊芝が馬の健康状態を維持してくれることを頼りに、いつまでも健康で元気にグラウンドを走ってくれることを願っています。

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